無題

知り合いに誕生日プレゼントを渡し損ねたので、盛大な後付け設定なSS。

SSとか超久しぶりに書いたので、猛烈駄文注意。

目が腐っても責任取れません。

今日という日の為に、何ヶ月も前から準備をしてきました。
昔から細かい作業が苦手で、不器用という自覚もあります。
それでも何とかして、手作りのアクセサリーを作って渡したかったから…。
そういって友人に教えを請うた時、
困ったような顔をしながらも「いいですよ」と言ってくれた。

「やっと…やっと、上手く作れました」
「……よかった…です…ね」
なんとか完成させたアクセサリーを眺めていると、
作り方を教えてくれた友人も嬉しそうな声を上げた。
元々色白なのもあるが、
ここ数日は寝る間も惜しんで教えてくれたのもあり、
より一層不健康そうな顔をしている。
それからしばらくの間、2人で完成の余韻に浸っていると、
友人が立ち上がってフラフラしながら店の奥へと向かった。
「……それじゃあ…そろそろ梱包用…の……紙……持ってきます……ね」
そうだ。これで終わりじゃない。
梱包を済ませ、プレゼントして初めて終わるのですから。

それから数時間。
悪戦苦闘しつつ、不格好ながら人に渡せるレベルの梱包を終え、街の中を走り抜ける。
ガルは、どんな顔をしてくれるでしょうか。
喜んでくれるでしょうか、それとも不格好なプレゼントを見て苦笑いを浮かべるでしょうか…。
どんな反応をしてくれるにせよ、これを早く渡したい。
気がつけば、いつもの店の前に私は立っていた。

呼吸を整え、乱れた服や髪を軽く整える。
「よし。大丈夫…ガルはきっと、受け取って下さいます」
確認するように自分に言い聞かせ、そっと扉を開ける。
その僅かな隙間から店内を覗き込んで視線を動かせば、目的の人物はすぐに見つかった。
「あ、ガル…っ」
扉を開けて、いつも通りに声を掛けようとするが、途中で止まる。
「でね、――――なんて事があったのよ」
「へぇ。随分と珍しい経験をしたねぇ」
ガルが楽しそうに女性と話している。
手入れの行き届いた紫色の髪に、綺麗なドレス。
そして、女性の手には、丁寧に装飾の施された小さな箱。
「そういえば、今日は誕生日よね。っていうわけで、はいこれ。プレゼント」
女性が箱を渡そうと差し出した所で、私は扉を閉めてた。

胸の奥が酷く痛む。
手元の不格好な箱に視線を落とし、女性の持っていた箱を思い出す。
「きっと中身も、こんなお粗末なものじゃなくて、良いものなんでしょうね…」
溜息をついて視線を上げれば、ショーウィンドウに自分の姿が映る。
スカートを穿いてはいるが、いつもと何一つ変わらぬ格好。
比較するようなものじゃないとわかっていても、つい、何もかもを比較してしまう。
「あんなものを見た後では、流石に渡せませんね」
そう呟くと、その辺のゴミ箱に手持ちの箱を投げ入れて、足早に店を後にした。

ぽつり…ぽつり…。
「おかしいですね…。雨なんて、振らないはずなんですけれど…」